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第2回 クラウド時代の「ORACLE MASTER」──
「作らないシステム」に挑戦するエンジニアのスキルとは
クラウドの時代。それは今までのIT業界を規定していた様々な「約束ごと」がひっくり返る時代だ。従来型の知識がそのまま役に立つとは限らない。従来からある企業がそのままの形で存続するかどうかも分からない。変革の時代は、先が読めない不透明な時代だ。このようなクラウドの時代に、ベンダー認定資格の制度はどのように位置づけられるのだろうか。
特集「クラウド時代のITスキル・ポートフォリオを考える」の今回は、日本オラクルの岩田健一氏(執行役員 オラクルユニバーシティ本部長)に「クラウド時代のOracle認定資格の意味」を聞いた。
クラウド時代とは「作らないシステム」の時代
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岩田氏は、次のように話を切り出した。「クラウドといっても、いろいろな定義があります。SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)
、プライベートクラウドなどです。その中で、Oracleの特徴は“すべてのサービスを提供できる”ことです。SaaSも手がけていますし、プライベートクラウドのプラットフォームを提供することもできます」。
実際、ここ数年のOracleの動きからは、同社が「フルスタック」を指向していることが見えてくる。同社は、これまで業種別アプリケーション、ミドルウエアなどさまざまな企業を買収してきた。2010年に入りハードウエア・ベンダーであるSun Microsystems社の買収を完了したことに伴い、CPUチップ、サーバ、OS、仮想マシン、データベース管理システム、ミドルウエア、アプリケーションと、情報システムの主要な構成要素を自社製品として供給できる能力を得るに至った。データベース管理システムOracle Database 11g は同社の看板といえるが、それだけでなくOracle Fusion Middleware 11gという開発基盤があり、Oracle CRM On DemandのようなSaaS、電力・ガス・水道と公益業界向けアプリケーションOracle Utilitiesをはじめとする業界特化型のアプリケーションなど、さらに多数の製品群がある。 |
日本オラクル株式会社
執行役員
オラクルユニバーシティ
本部長 岩田健一氏 |
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そして同社は、2010年9月にハードウエアとミドルウエアを統合した製品Oracle Exalogic Elastic Cloudを発表している。その名の通り、クラウドのソリューションとして登場した製品である。
なぜ、このように幅広い製品群を持つに至ったのか。競争優位性を獲得する上で重要だったからだ。
「(2008年の)リーマンショック以降、コスト圧縮への要求はいっそう厳しくなっています。そこで情報システムを“作る”コスト、運用するコストをどう下げるかという問題が出てきます。Oracle製品には、オープンなアーキテクチャでありながら、インテグレーション・コストを最小化できるというメリットがあります」(岩田氏)。
1990年代以降のIT業界で主流となっているオープンなアーキテクチャは、水平分業で競争するベンダー各社の製品を購入し、組み合わせることでシステムを構築する。このやり方の場合、同じ分野の競合製品の存在により製品の機能は洗練されていき、費用対効果は良くなっていくというメリットがあり、これが「メインフレーム中心からオープンへ」というIT業界にとって破壊的なトレンドをもたらした。その半面で、オープンなアーキテクチャにおいては、複数のベンダーの製品を検証し統合するコスト、つまりインテグレーション・コストを誰かが負担しなければならない。このコストは最終的には顧客企業が支払うことになる。個別製品の優位性を保ったままでインテグレーション・コストを圧縮できれば、それは大きな競争優位性になる。
前述のようにOracle製品の幅は広く、「Oracle製品の組み合わせによりインテグレーション・コストを削減する」と説明できるほどの製品体系を持つに至っている。
では「インテグレーション・コストの最小化」で何が変わるのか。
2010年9月まで米Oracle社長を勤めたチャールズ・フィリップス氏は、2009年10月に開催された「日経フォーラム 世界経営者会議」において「作らないシステム」という言葉を放った。既存のリソースを活用し、短期間ですぐに実稼働に移せるITシステムを作り上げるにはどうすれば良いか。一つの答えは、機能を新規開発するのではなく、製品に備わった機能を知り尽くし、使い尽くすことだ。「作らないシステム」──これはクラウドの問題意識と通じるものがある。
クラウドの時代の認定資格の意味とは
「Oracleの認定資格には、Oracleの製品が持つ機能群の正確な知識を提供するという意味があります」と岩田氏は話す。これだけを聞くと当たり前の説明に聞こえるが、問題はこの先だ。「『作らないシステム』の実現のために、Oracle認定資格が生きてくる」のだという。
「認定資格を取得しているということは、ターゲットとなる製品の知識を得ているということ。それらの知識があれば、今すぐ使わない知識であっても、クラウドの時代に“今、この機能を使える”とピンとくるスイッチが入る」。つまり、製品の機能を使い尽くして作る「作らないシステム」では、ORACLE MASTERの出番が増えるというのだ。
「その意味で、最新版の認定資格をぜひ取得していただきたい。例えばOracle Database 11g には、セキュリティやパフォーマンス向上、可用性のための多くの機能群がありますが、これらはクラウドの時代に一層重要になります。新バージョンのOracle製品を購入するに先立ち、スタッフに認定資格を取ってもらうやり方もあります。的確な製品評価のためにもお薦めできるやり方です」。
別の疑問を岩田氏にぶつけてみた。グローバル化するIT産業の中で、ORACLE MASTERはどのような意味を持っていると考えられるだろうか?
Oracleの認定資格制度が日本から始まったことは良く知られている。日本のITエンジニアを対象として始まった認定資格が、今では世界中のITエンジニアのスキルを測る指標となっているのだ。
「当然ながら、日本オラクルの社内にも、認定資格を持っている人間がいます。私達とインドの社員とが仕事をするにあたり、『エンジニアが持っている資格でお互い技術レベルが分かる』という経験をしました」。ORACLE MASTERがあれば、インドのエンジニアと日本のエンジニアのITスキルを共通の物差しでスキルを知ることができるのだ。
ORACLE MASTERの最上位資格は“Platinum”である。日本の次にPlatinum取得者が増えている国がインドだという。世界市場で活躍するためには、認定資格も上位のものを取得する必要がある訳だ。「日本のITエンジニアもグローバル競争にさらされている訳です」。
その一方で、「ORACLE MASTERを取得していて、かつ日本語でコミュニケーションができることには価値があります」と岩田氏は言う。日本市場は、成長率こそ鈍ったものの世界的に見ていぜん巨大な規模を持つ。この市場で存分に活躍でき、かつグローバルな資格を取得しているエンジニアには大きな価値があるというのだ。
最後に、もう一つの大きな疑問について質問をした。クラウド時代のITエンジニアに要求される資質は、どのようなものなのだろうか。岩田氏の回答は「エンジニアとしてのチャレンジができるかどうか」というものであった。
エンジニアは、「できないこと」を「できること」にする。バグがあるからできない、過去のやり方ではできない、といった多くの「できない」を、「できる」に変えられるのは、チャレンジするエンジニアだけだ。「技術的なチャレンジができることが、とても大事になってくる。例えば他の国のエンジニアと差を出したければ、ここで勝負をしなければいけません」。
「作らない」にチャレンジできるエンジニアの時代
クラウドの時代には業界再編が進むとの見方をする人は多い。「実際、過去5年のOracleの歴史は
は、いわば業界再編の歴史」と岩田氏は話す。大型買収を繰り返してきたOracleには、ここ数年IT業界に押し寄せたトレンドがことごとく反映されているといえる。そして、今のトレンドは“クラウド”である。
新規の機能を極力書かない、作らない。既存製品の機能をインテグレーション(統合)してサービスを作っていく。そのインテグレーションのコストを下げ、リスクを下げる。そのために、今まで誰も試していないことにもチャレンジする。これが今のIT業界で求められる大きなトレンドであり、クラウドもこのトレンドの延長にある。
作らないで済ませるためのベンダー認定資格。開発を業務としてきた多くのITエンジニアにとっては逆転の発想と見えるかもしれないが、クラウドの時代が「作らないシステム」「最小限の開発で済ませるシステム」の時代となっていくことには必然性がある。ORACLE MASTERは、そんな時代を生き延びるためのスキルともなりうるのだ。

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