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第5回 クラウド時代のVCP──インフラが提供可能な要件のマトリックスを熟知する
クラウドのインフラとして仮想化技術が注目されているのはなぜか、そしてクラウド時代のインフラエンジニアに求められる条件とは何か。VMwareの技術者認定資格VCPについてヴイエムウェア プロフェッショナルサービス部長 野崎恵太氏に聞いた。
クラウドの時代に、仮想化技術はその重要性を増すと考えられている。いわゆるプライベートクラウドの多くは仮想化技術を用いて構築されている。 なぜ仮想化技術がクラウドの時代に注目されるのか。そして、クラウド時代のエンジニアにとって仮想化技術はどのような意味を持つのか。ヴイエムウェア プロフェッショナルサービス部長 野崎恵太氏に話を聞いた。
既存システムからクラウドへの段階的な移行を可能にする
「仮想化技術の価値は、クラウドに求められる要素のいくつかを簡単に実現できる事にあります」と野崎氏は話す。「クラウドに必ず仮想化が必要かといえば、そうではありません。しかし仮想化技術を導入することで、クラウドへと向かう道筋を付けることができます。何段階かに分けて、徐々に導入を進めることも可能となります」(野崎氏)。
情報システムを実際に構築し運用する現場では、段階的な導入には大きな価値がある。目の前にある運用中のシステムを一度に捨てて、新規のシステムに入れ替えるということは、そう簡単にできることではないからだ。
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仮想化技術を段階的に導入するには、次のような順番になる。フェーズ1は、個別基盤としての仮想化技術である。この段階ではクラウドはまだ関係がない。仮想化技術そのもののメリット、すなわち管理の容易さなどを生かしたい場合に使う。
フェーズ2は、共通・統合基盤としての仮想化技術だ。より高い可用性を提供するためのシステム基盤として仮想化技術を用いる。
フェーズ3は、IaaS(Infrastructure as a Service)、クラウド基盤としての仮想化技術だ。仮想化したコンピュータ・リソースを、サービスレベルを定義した上で、SLA(サービスレベル契約)に基づいてユーザーに提供する。「何日以内に、どのような仮想化環境を、いくらの価格付けで、どのような可用性で提供するか」という形態である。このような情報システムの利用形態を「プライベートクラウド」と呼ぶことが多い。
このように、仮想化技術はその使い方(導入のフェーズ)により意味付けが大きく変わる。それに伴い、仮想化技術のプロフェッショナルの仕事の意味も変わってくるのだ。
仮想化技術をクラウド基盤として使う
フェーズ3、つまりプライベートクラウドを構築するための仮想化技術には、どのような機能が求められるのだろうか。 「SLA(サービスレベル契約)に基づいて情報システムを提供するためには、システムが制御可能であることが重要となります」と野崎氏は言う。
プライベートクラウドを構築し、サービスレベルを定義して、仮想化したコンピュータ・リソースを顧客に提供し続けるには、当然ながら情報システムのインフラを隅々まで制御できる必要がある。
「仮想化ソフトは、たくさんの種類のものが登場してコモディティ化しつつある、と言われることがあります。ただし、その仮想化ソフトがフェーズ3、つまりクラウド基盤に使える仮想化基盤かどうかは、よく見極める必要があります」と野崎氏は強調する。
仮想化技術のプロフェッショナルへの要求も変わる。「インフラを確実に制御でき、トラッキングできるか。それをシステムの様々な構成要素に添ってきちんと説明できるか。これらサービス構成要素のマトリックスを頭の中に描いて、『できること』と『できないこと』を理解すること。これができるエキスパートが求められます」。
野崎氏が言う「サービス構成要素のマトリックス」とは、提供する仮想化環境に関する要件の組み合わせだ。仮想化したCPUの性能、CPUの個数、メモリ容量、ネットワーク帯域など、仮想化環境が提供可能な性能の範囲、上限をよく理解する必要がある。性能要件だけでなく、可用性の要件もある。こうした多種多様な「選択可能な要件の範囲」のマトリックスを熟知していることが、クラウド時代の仮想化技術のプロフェッショナルには求められるのだ。
「サービス構成要素のマトリックスの大きな部分をカバーできるプロフェッショナルが、VCP(VMware Certified Professional)なのです」と野崎氏は語る。
インフラを「マトリックス」で理解する
そして、仮想化技術を理解することは、仮想化対象となる情報システムインフラの全体を理解することでもある。仮想化技術は、コンピュータ・リソースのすべてに関わる。サーバ本体だけでなく、主要ベンダーのストレージの知識、そしてネットワークの標準技術に関する知識も必要となる。
例えばVMwareの仮想化基盤「vSphere」の設定項目は数千種類にのぼる。この項目すべてを闇雲に調べていくことは無理がある。「ここで重要な項目を効率よく理解し、設定を実施できるスキルを認定するために、VCPは有用なツールとなるのです」と野崎氏は言う。
VCPの認定制度は教育コースと試験が組み合わされている。その意味について、野崎氏は「仮想化技術は、情報システムインフラの実際を知っている必要がある」からだと説明する。「VCPの認定制度は、インフラの実際に関する知識を実習で確認します。例えば、パフォーマンスチャートである波形が出て、ユーザーから『遅い』とクレームが来ているとする。この状況下で『どのような手順でトラブルシューティングをしますか』と聞かれる。それなりに知識がないとクリアできません」。
クラウド・インフラ構築に必要なスキルセットとは
クラウドの時代には、エンジニアに求められるスキルセットは従来とは異なってくる。インフラ系のエンジニアと、アプリケーション系のエンジニアでは、異なるスキルセットが要求される。
両者の違いをどのように理解すればよいだろうか。野崎氏が示す指針はこうだ。「私達は、ミドルウエアを切り口と考えています。そこから下はインフラエンジニアの領域、そこから上はアプリケーションエンジニアの領域です」。
仮想化基盤vSphereは、複数の物理サーバを仮想化して「見えなく」する。例えば、Webアプリケーションを、Javaベースのサーバ・ソフトTomcatで動かしているとする。アプリケーションエンジニアは、それがどの物理サーバー上で稼働しているのかを意識しなくてよい。仮想化環境に割り当てられたCPU能力とメモリ容量が分かればよい。一方、インフラエンジニアは、ミドルウエア(この例ではTomcat)に対して適切なコンピュータ・リソースを提供する責任を負う。
かつては、アプリケーション開発のエンジニアがパフォーマンス(性能)、スケーラビリティ(拡張性)、アベイラビリティ(可用性)に責任を持っていた。クラウドの時代では、これらの責任はクラウド側に移るわけだ。
「その分かりやすい例は、クラウド上のサービスであるSalesforceです。Salesforceの上でパフォーマンスを気にして開発する人はいません。よほど大規模なシステムでない限り、パフォーマンスは気にせずに作り始めることができる。これがクラウド時代のアプリケーション開発です」。
クラウドの時代には、アプリケーションエンジニアに必要なのは、業務に関する知識と、それをシステム化するための技術だ。インフラの深い知識は、アプリケーションエンジニアにとっては必要ではなくなっていく。
その一方、インフラ系のエンジニアは、インフラのパフォーマンス、スケーラビリティ、アベイラビリティの責任を一手に背負う。そこで、これまで以上に高度なスキルセットが要求される。「VCPという認定資格は、まさにインフラ系への要求が高まっていることに対応する資格といえます」と野崎氏は言う。
クラウドの時代には「技術の限界」の知識が重要
クラウドの時代のエンジニアに求められる要件は何だろうか。野崎氏は、次のように答えてくれた。
「私達が採用するときには、テクニカルスキルの幅を聞くようにしています。もちろん、vSphereを使うビジネスの場合はインフラに強いことが必要ですが、それ以外でどのような知識を持っているかを聞きます」。
自分の担当領域に関する知識は当然だが、それ以外の幅広い知識が生きる局面が出てくるのだという。例えば、WiFiや3Gネットワークの無線通信に関する知識や経験があり、最先端でどのような性能が出ているのか、次の世代ではどこまで可能になるのかを理解していることには価値がある。
「そして『できる限界』を幅広く抑えておくことです。技術が進化した結果として、今までできないことができるようになるタイミングがある。これを見極められることは大事です」。
CPU性能、ネットワーク性能、仮想化の能力は、年々高まっている。それに伴い、「できることの限界」も日々変動している。
「例えば、私達の製品を使ことで、3年前には16台までの物理サーバで1クラスタを形成できました。抽象化のレベルが違うので同列の比較は難しいですが、今は私達の製品により5000ノードのクラウドを作れます」。
抽象化できる規模は、3年間で劇的に変化した。この変化を知っているのといないのとでは、提案できるシステムの幅はまったく変わってくる。 「逆に、トレンドを追うだけのエンジニアは寿命が短いおそれがあります。数年前まで商用UNIXに強いエンジニアは大勢いましたが、今はどれだけ残っているか」。野崎氏はこのように問いかける。技術のトレンドにより、技術者へのニーズは変動する。このような変化に耐えるには、まず「変化を知るスキル」が必要だ。
日々変動する技術の限界値を知り、「提案できる範囲」の変化を把握すること。インフラエンジニアにとって、技術の先端を知ることが今まで以上に重要となる。
クラウドの時代、インフラの姿は大きく変貌しつつある。そして、インフラに関わるエンジニアへの要求も大きく変化している。知識の幅と、変化を知る能力が問われる時代となったのだ。
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